楽天市場の諸問題

裁判所への提訴

検索連動型広告における不正競争等の問題性について

2014年8月

近年、インターネット広告費は増加し続け、広告費全体に占める媒体構成比も上昇を続けている。とりわけ、検索連動型広告は、消費者の関心や欲求に即応した広告宣伝手法であり、費用対効果においても優れていると言われている。このようなインターネット上の広告サービスは、今後益々、その影響力を増していくと予測される。
しかしながら、そのような影響力故に、周知された商標の持つ顧客誘引力が第三者によって安易に悪用されないための秩序が形成されなければならない分野であるとも言える。
特に、市場において強大な力を有する事業者によって、大規模に不正な競争阻害行為がなされる状態を放置すると、独自性を持った小規模事業者の発信力が不当に歪められることになりかねない。また、消費者の誤認・混同を狙い撃ちするような広告宣伝のあり方は、消費者の利益をも害するものに他ならない。
本件訴訟は、インターネット上の広告の世界に、公正な競争を確保し、小規模事業者と共に、消費者をも守ることを願って、提起するものである。

第1 当事者

1 原 告  株式会社 生活と科学社
   代表取締役 猪ノ口 幹雄

2 被 告  楽天 株式会社
   代表取締役 三木谷 浩史

    被 告  ヤフー 株式会社             
   代表取締役 宮 坂  学

第2 原告の事業内容

原告は、1999年4月1日に設立され、同年11月より、インターネット上に店舗サイトである「石けん百貨」を出店し、主として同店舗の利用者を対象に、日用品雑貨、洋品雑貨、石けん等の販売業を営んでいる株式会社である。
店舗サイト開設と同時に「石けん百科」という名称(2010年1月からは「石鹸百科」)で石けん等に関する情報を提供する情報サイトも開設し、運営している。

参考URL
「石けん百貨」  http://www.live-science.co.jp/
「石鹸百科」   http://www.live-science.com/

第3 サイト名が、原告のサービスの表示として広く周知されていること

原告は、「石けん百貨」との表示を、自らが開設する石けん等を扱うオンラインショップの店名として14年以上の長期間、使用してきた。
また、「石けん百科」や「石鹸百科」も店舗と密接な関係を持つ情報サイトの表示として使用し続けてきた。
「石けん百貨」および「石鹸百科」には、現在、平均して1か月あたり10万件を超えるアクセスがある。
これらの表示は各種メディアでも何度も取り上げられてきた。
そのため、「石けん百貨」および「石鹸百科(石けん百科)」は石けん等についての正しい知識を提供すると共に、安心できる商品を販売する店舗サービス及び情報提供サービスの表示として、インターネットを使用する消費者の間に広く認識され、広く社会的に周知されている(石けん等の一般名詞で検索すると上位に表示されることからも裏付けられる)。

第4 商標登録

原告は、これらの表示について商標登録している。
(1)石けん百科
商標登録 第4933873号
出願日  平成17年7月15日
登録日  平成18年3月3日
商標権者 原告(株式会社生活と科学社)
商品役務の区分、指定商品又は指定役務
第37類 洗濯又はこれに関する情報の提供・指導および助言、建築物の内外の清掃又はこれに関する情報の提供・指導及び助言、食器類の洗浄又はこれに関する情報の提供・指導及び助言等
(2)石けん百貨
商標登録 第5039119号
出願日  平成17年7月15日
登録日  平成19年4月6日
商標権者 原告(株式会社生活と科学社)
商品役務の区分、指定商品又は指定役務
第3類  せっけん類、歯磨き 
(3)石鹸百科
商標登録 第5221584号
出願日  平成20年7月14日
登録日  平成21年4月10日
商標権者 原告(株式会社生活と科学社)
商品役務の区分、指定商品又は指定役務
第37類 洗濯又はこれに関する情報の提供・指導および助言、建築物の内外の清掃又はこれに関する情報の提供・指導及び助言、食器類の洗浄又はこれに関する情報の提供・指導及び助言等

第5 検索連動型広告とは

検索連動型広告とは、ユーザーが検索サービスを利用して、自らの関心ある事柄についてキーワードによるweb検索をした際に、そのキーワードが、広告主があらかじめ登録したキーワードであった場合に、検索結果を表示するページに、登録した広告主の広告を表示させる広告方法である。
検索連動型広告により、広告主は、自らの提供するサービスや商品に関心を有する消費者にターゲットを絞って広告を表示させることができることから、効果的な広告宣伝方法とされている。
検索連動型広告の著名なサービスとして、グーグル株式会社の提供するGoogle アドワーズ広告や、ヤフー株式会社の提供するYahoo!スポンサードサーチがある。
いずれも、検索結果画面の側部や上部に、広告主の登録した広告が表示され、消費者が広告のタイトルの文言をクリックすることで、広告主がリンク先として登録したURLへ移動させることができる。

第6 不正競争行為

1 楽天による検索連動型広告
楽天はGoogleアドワーズ広告やYahoo!スポンサードサーチに、「石けん百貨」を指定キーワードとした広告を掲載している。
その広告の見出しは「石けん百貨【楽天】」や「石けん 百貨通販」、「石けん百貨大特集」、「石けん 百貨は楽天」、「石鹸 百貨 楽天が格安」、「石けん百貨/楽天」等とされている。
しかし、これらの見出しには原告と無関係の楽天の石けん販売サイトへのハイパーリンクが施されており、ユーザーがこの見出しをクリックすると楽天の石けん販売サイトに移動してしまう。
小さく「広告」であることが表示されているものの、検索結果のトップの欄よりも更に上に表示されていることもある。広告欄は、検索結果の右横であることもあり、また重複して表示されることもあるが、概ね検索結果画面の目立つ位置に設定されている。
2 ヤフーによる検索連動型広告
ヤフーもGoogleアドワーズ広告やYahoo!スポンサードサーチに、「石けん百貨」を指定キーワードとした広告を掲載している。
その広告の見出しは「石けん百貨/通販」 等と題されており、これらの文言に原告とは無関係のヤフーの石けん販売サイトへのハイパーリンクが施されている。
3 誤認・混同のおそれ
これらの検索連動型広告は、原告のサイトの具体的店舗名であり商標である「石けん百貨」等をキーワードとして検索した結果として表示される検索結果画面の目立つ箇所に表示される。
そして、その広告の見出しにも、石けん百貨等の商標そのものや、これと極めて類似した表記が用いられている。
従って、需用者たる一般消費者が原告のサイトとハイパーリンク先の被告の運営するサイトを誤認・混同するおそれがある。
広告であることに気づかない可能性や、広告であることに気がついたとしても、周知された具体的店舗名たる商標やこれに類似した表記がなされていれば、その広告を当該店舗の広告であると受けとめ、誤認・混同が生ずる高度の危険がある。
具体的には、「石けん百貨」をキーワードとして検索した検索結果画面に、 「石けん百貨大特集」や「石けん百貨/通販」と表示されていれば、自らの目指すサイトへのリンクが貼られていると受けとめてしまう危険がある。

第7 商標としての視認性

本件で問題としている楽天やヤフーによる検索連動型広告は、原告の商標である「石けん百貨」、「石けん百科」および「石鹸百科」またはこれを構成する文字をキーワードとして検索した場合に表示される広告である。
ただキーワードとしているにとどまらず、検索結果画面に表示されるスポンサーリンク広告自体において、これらの原告の商標を含む文字列が見出しとして視認可能な状態で電磁的方法により表示されている。
このような視認性ある状態で商標を使用していることから、検索キーワードにのみ商標が使用されたケースとは異なり、商標の視認性が明らかである。

第8 被告楽天への過去の警告(被告楽天の故意・過失)

原告は、平成17年9月30日に、被告楽天に対し、被告楽天がインターネット上の検索サイトであるGoogleにおける「石けん百貨」等の文言で検索した場合に表示されるスポンサー広告欄に「石けん 百貨通販」との文字列を用いて直接リンク型の広告を出していることが、原告が長年使用し、当時商標登録申請中であった文字商標と類似していることから、消費者等に対し誤認・混同が生じかねないとして、このような文字列を用いた広告を直ちに中止するよう求めたことがあった。
この際、被告楽天は、同年10月26日付けにて、サーチワードは、外部の広告業者のシステムにより、一定の機械的法則に基づき、自動的に選定されるものであるとし、「石けん」「百貨通販」というサーチワードも自動的に選定されたものと主張しつつ、同年10月12日をもって「石けん 百貨通販」のサーチワード登録を削除したと回答していた。
従って、被告楽天は、原告が「石けん百貨」の商標を使用して営業していたことを十分に認識していたにもかかわらず、その後、間もなく「石けん 百貨大特集」や「石けん 百貨は楽天」、「石けん百貨【楽天】」等との明らかに同じ問題を有する文言による広告を再開しているのであり、本件不正競争行為をなすについて故意または過失のあることが明らかである。
                                                                        以 上